住環境を重んじる欧米等の先進諸国では、ヒートショックのない全館暖房の家は常識です。 日本では建物のバリアフリーは重視されますが、家の中の温度差をなくす「温度のバリアフリー」については情報も少なく、近年になってやっと注目され始めたのが現状です。 厚生労働省からはヒートショックが大きな要因の一つとなる「心疾患-脳血管疾患」についての第一回目の調査結果が発表され、国でもこの問題を重視する動きが出てきています。
シログラフ
<グラフの解説>
死亡原因で一番多いのが癌等の悪性新生物による死亡者で年間30万人強ですが、実は心疾患&脳血管疾患を合計した血管系による死亡者もその次に多く年間30万人弱です。(平成16年ベース)
グラフの赤い部分が心疾患&脳血管疾患による死亡者で、緑部分が癌などによる死亡者です。 ここで注目すべきなのは、癌などによる死亡者は毎月ほぼ同数で季節変化がないのに対し、心疾患&脳血管疾患による死亡者は冬季に大きく増加していることです。1月は8月の1.6倍にも達し、秋冬季の増加分を積算すると約5万人にもなります。 この冬季に増える要因の一つがヒートショックです。また、死亡は免れたものの、その後入院や治療を要する人数は死亡者の数倍に達していると予測されています。このようにヒートショックは肉体・心理的負担とともに、大きな医療費負担の問題(*注1)もはらんでいます。住宅内でのヒートショックのリスクが先進諸国で注目され、早くから警鐘が鳴らされている理由はここにあります。日本ではようやく平成18年8月末に厚生労働省から「第1回 心疾患-脳血管疾患死亡統計」厚生労働省ホームページAが出版され、冬季の著しい死亡数増加が浮き彫りになり、今後の対策が待たれています。
(*注1)
平成19年に厚生労働省より発表された「平成17年度国民医療費の概況」厚生労働省ホームページBによれば一般診療医療費総額約24兆9600億円のうち循環器疾患は最も多く約5兆3700億円(全体の約22%)を占めます。これは2番目に多い新生物(癌等)の3兆500億円の約1.8倍にもなります。※厚生労働省ホームページ平成17年度以降もこの傾向はほぼ同じか、ますます顕著になっているものと推測されます。冬季では特にヒートショックが引き金となって発症する脳梗塞や心筋梗塞などは死亡は免れてもほぼ残りの人生において治療・加療が必要となり、経済的にも個人と国庫の大きな負担となっています。